第9章 さよなら、リトルガール クロス元帥夢??
「それがなんだっていうんですか! あなたはもうちょっと考えて動くべきです!」
「あなたこそよく考えなさい。AKUMAは人の皮を被るのよ? 年齢なんて関係ない」
全く貧乏くじを引いたものだ。もう何回目かわからないため息をついて事の発端を思い返す。
指令が来たのは四日ほど前。AKUMA退治の依頼だった。エクソシストはAKUMA退治よりイノセンスの回収任務にあたらせられるはずだが、今回は違った。
内容はこうだ。AKUMAは人を殺すことで成長する。だが、その問題のAKUMAは少し変わった殺し方をするらしい。これからはそのAKUMAをマーダ―と仮称して呼ぶことにする。マーダ―は普通のAKUMAと違って残虐な殺し方を好むらしい。普通のAKUMAは殺し方など特に一定してはいないが、マーダ―の場合は内臓を生きたまま引きずり出し、恐怖を与え笑いながら犯行に及ぶという。その街では一時殺人鬼の記事で埋め尽くされたが、教団が調べるとわずかだがAKUMAの痕跡を発見したらしい。その痕跡は被害者全員の唇にAKUMAの血がついていたということだった。
つまり、マーダ―は散々人で遊びつくした後その人間にキスをするのだ。人を慈しむように。ぞっとする話である。
その報告をしてきたコムイの苦虫を噛んだような表情がひどく印象的だった。彼は優しすぎてときどき心配になる。
「あなたはもう少し考えるべきだ」
声にはっとする。彼の声がじかに届いた。背後から聞こえる呼吸が荒い。どうやらやっと現場に着いたらしい。
「あなたは殺害現場を見ていないと言ったじゃないですか。彼女は現場にいただけなんでしょう?被害者かもしれない」
彼の言葉に私は思わず噴き出した。怒って近づいてくる彼を手で制止して私は言う。
「じゃあ、試してみましょう……あなたそこに落ちてる拳銃を持ってきて?」
被害者が抵抗したのか私の後方に拳銃が落ちていた。片方でイノセンスを持ち銃口は彼女を狙ったまま、もう片方の手で手のひらを彼のむけて差し出した。彼は不審そうな声音で言う。
「……なにする気ですか?」
「証明するのよ」
数秒の間の後、彼は私に拳銃を渡す。
少女がこちらの意図を察したのか、こらえ切れなくなったかのように叫ぶ。
「おねがい!やめて……死にたくない!」