第9章 さよなら、リトルガール クロス元帥夢??
月明かりが雲に遮られている夜、室内にはわずかな光源を銃が反射させ鈍く光っていた。
銃口の先には少女がいる。凶器を向けられた少女はひどく怯えていた。震えがひどくて歯の根が合わないのかずっとカチカチと音が鳴っている。生きるか死ぬかの瀬戸際なのだから想像を絶する恐怖なのだろう。だが、それを冷静に見ている自分自身はどこか人間味を感じない。よほどAKUMAより機械的で無感情だ。銃を持ち少女に向けているのは私だというのに。まるで何も感じない。
この光景にどこか既視感を覚えたがいつなのかわからない。だが、それ以上に今は通信機のほうが気になった。
通信機越しに人間が走っている音が聞こえる。恐らく今回の任務に付いてきたファインダーだろう。きっと慌てて向っているのだろう足音がうるさい。そして私の周りで羽ばたいていた通信機から声がうるさく響いている。
「あなた正気ですか!?」
足音のうるさいファインダー君だ。
「正気も何も狂っていませんが」
「僕から見たあんたはよっぽどおかしいよ!」
至極真っ当に答えたはずなのに、彼は怒鳴り声をまき散らす。めんどくさくなって私は息を吐く。こんな問答な何が意味があるのか。
まだ言い足りないのか彼は必死に言い募ってくる。
「小さな少女ですよ!?」
そう、少女だ。今目の前にいる精巧に作られた人形のような美しい少女。まだ10歳にも達してないだろう。だが、その周囲は異常だ。薄暗く埃と湿気と血の匂いが入り混じったひどい匂いがこもっている。それも仕方ない。なぜなら周りにはゴロゴロと死体が散らばっているのだから。私が殺したわけではない。やったのは恐らく今回のターゲットのAKUMAだ。
私はまた溜め息をついた。
「……あなたいつ入団したの?」
虚を突かれたのか、少し間が空いて彼はぶっきらぼうに言った。
「一か月ちょっと前ですけど……」
その答えに私は頭を抱える。この任務は彼と私だけしか就いていないのだ。他に説明したり私のため息をなだめてくれる人がいない。
私の気持ちが通信機越しでも伝わったようで彼はさらに語気を荒くする。