第9章 さよなら、リトルガール クロス元帥夢??
「大丈夫ですか? 起きて!」
頭が脈打つように痛みが走る。それと同時にファインダー君の泣きそうな声で私の名を呼んでいる。ゆするな、痛い。私はゆっくりとだが現実に引き戻していった。
目を開けると、そこは先ほどの部屋のようだった。といっても天井は吹き飛んで瓦礫だらけだが。
焦げ跡と肉が焼けた匂いが鼻につく。むくりと起き上るとマーダ―は吹き飛んでしまっていたようだった。まぁ、自爆したのだから当たり前なのかもしれないが。
「よかった!」
体を動かし始めた私にファインダー君は涙目を輝かして抱き付こうとした。それを私は軽やかに避けて立ち上がる。
すると、どこからかクスクスと無邪気な笑い声が聞こえてきた。ファインダー君がまた腰を抜かす。彼を放って声の先に目を向けると瓦礫が折り重なっているところにマーダ―が首だけになってこちらを見ていた。
「たのしかった、たのしかった、たのしかった、内臓取り出し、悲鳴取り出しぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ」
甲高い声で狂気にも見えるうっとりとした笑顔で歌っている。
私はゆっくりとマーダ―に近づいてイノセンスを発動させる。だが、それでもマーダ―は歌い続けている。
「わたしのおもちゃはどこどこ。はやくみつけてあそばなくちゃ」
その言葉に私はふと笑みをこぼし
「さよなら、リトルガール」
弾丸を撃ちはなった。弾丸はマーダ―の眉間を打ち抜いて、少女の皮は砕け散った。
少女はただのがらくたになった。
このAKUMAに人間性があるとするならば、それは幼い少女そのものだった。もし、少女が本当に人間だったら私はどうしただろう。撃ったことを謝ることが出来ただろうか。
さっきの記憶の中の師匠は私をろくに調べもせず助けた。師匠はAKUMAでさえも改造して助けてしまう変人だ。そしてAKUMAを憎み殺し続ける私はなぜか師匠と同じ神の使徒で、AKUMAを殺すために機械のように生きている。よっぽど人間らしいのはどちらだろうか?
くだらない自己問答に自嘲の笑みが浮かぶ。
師匠は私を助け、私は彼女を助けなかった。
師匠はきっと私より優しかったのだ。