第7章 誰かの雨 神田夢
「馬鹿か! さっさと行くぞ!」
強い力で神田が私の腕を引っ張ってくる。その腕にAKUMAの血が落ちてきたのを見て私は慌てた。
「神田! なんで来ちゃったの!? 血が!」
すると神田はさらに眼光を鋭くさせた。
「てめーがぼけっと突っ立ってるからだろうが!」
怒鳴られて私はきゅっとめをつむる。その様子に神田はため息をつく。
「なんであんなとこに突っ立ってんだよ」
神田の言葉に私は胸が苦しくなった。彼は私の心配をしてくれているのだ。半分はめんどくささからかもしれない。けれど彼はわかりにくいが本当に優しい。そして私は思う。あの場で考えていたことを。私の死に方もあんな風になってしまうんだろうか、とぼんやりとしながら考えていたことを思い出す。
エクソシストなんて死に方は二種類しかない。AKUMAに殺されるか、教団を裏切って咎落ちになるか、ただそれだけしかない。その二択だと私はきっとAKUMAに殺されるのだろう。
そう考えると、さっき私に張り付いた雫はひどく哀れで惨めだ。だが、きっと遠からず私もそうなる運命だろう。血を流し、ぐちゃぐちゃになって死ぬのだ。それが、ひどく怖い。
死を恐れるエクソシストなんて愚の骨頂だろう。
私にはまだ未練がある。放っておけない仲間やまだ胸を張って彼らの隣を歩いていきたい。けれど、不安は消えないのだ。漠然とした死というものが抜けきらない。私の陰にずっと潜んでいるのだ。
怖い怖い怖い怖い怖い!
すると寒くもないのに腕が震えてきて止まらない。すると神田に掴まれた腕が更に強く握られた。