第1章 純粋な死神 グール 鈴屋什造
私は目の前でこと切れている亡骸に手を合わせる。
そして鈴屋と同じように座り込んで土を手で掘り始めた。すると鈴屋が意外そうにこちらを見つめてきた。
「なによ?」
私の声はなぜか怒気が混じっている。すると鈴屋はクスリと笑う。
「意外だっただけです」
「意外?」
「秋良はなーんにも関心が無いように見えていたので」
鈴屋の反応に私は突っかかるように言う。
「死んだものに敬意を払えないなんて思わないで」
つんとした私の反応にも鈴屋は笑うだけだった。
それからはなんにも会話がなく、穴を掘り遺骸を埋めるころにはあたりはすっかりと暗くなっていた。
施設に帰ったら大目玉だろう。でも、それでもかまわなかった。
すべての作業が終わったとき、鈴屋は深々と私に頭を下げた。
「手伝ってくださり、ありがとです」
「礼なんて必要ない。私はあなたに謝罪しなくちゃ」
不思議そうに鈴屋は頭を上げる。
「どーしてです?」
「誤解してた。あなたが動物を殺してるって、でも、あなたじゃない……ごめんなさい」
一緒に作業をしてわかった。彼は愛おしそうに彼らを埋めていった。丁寧に優しく。そんな人間が殺すはずがない」
すると鈴屋の顔が口の両端をあげる。
「そうですか、よかったです」
たんたんと彼はいうだけでまるで興味なさそうだった。
「あなた本当にいい人ね……わたしなんか」
言って言葉が詰まる。父と母の最期を思い出した。
彼らの亡骸をさCCGの捜査官が運び出す時も私は父と母に近寄れなかった。単純に怖くて、直視できなくてそんな自分が嫌でずっと今まで目を閉ざしていたように思う。
「私は死んだ父と母に何もできなかった。死骸をぼうっと見ているだけで毛布も掛けてあげなかった!!」
きっと両親は寒かっただろう。人にこんな姿を見られて惨めだっただろう。こんな不出来な娘でごめんなさい。
そして今日私は鈴谷を見て気づいてしまった。
私は悲しみから逃げていただけなのだ。