第6章 かみさまのこどもたち 神田夢
「神様のバーカ」
教団内でこんなことを言おうものなら誰かに叱責されるだろうが、今は誰もいない。
いつ終わるとも限らない戦争に無理やり参加させられるのだから、これくらい許されたっていいだろう。
自分のことはいくらでも諦めがつく。正直いつ死んでも構わないと思っている。けれど、仲間たちのことを思うとやりきれない気持ちになる。
同じエクソシストのみんなや他の仲間たちが死ぬのは見たくない。それならば自分が変わりにいくらでも死んであげるのにとそう神に願うばかりだ。今回も何人死んだのか神はわかっているのだろうか?
どうせ電車も来ない。人もいない。誰もレイアの胸の内など聞こえない。
「どうせ殺すなら私にしてよ!」
叫びは降りゆく雪の中に消えていく。
仲間の死に様などもう見たくない。レイアたちは100年もの間、屍の上を歩いている。それなのになんでゴールは見えないのだろうか。
「何やってんだ」
「ひゃっ!?」
驚きすぎて勢いあまって振り返ったせいでレイアは尻餅をついた。
「いたたた……」
冷たいうえに固い地面にお尻が打ち付けられ、じんじんと痛みが響く。
「周りに気を配れ馬鹿」
漆黒の髪を一つに結った彼はまさに見下すようにこちらを見ていた。黒い教団のエクソシストのみが着られるコート。神田ユウだった。神田の冷め切った眼差しをものともせずレイアはスカートをの汚れをはたきながら立ち上がる。
「すんまっせーん」
「あぁ!?」
短気な神田は眉間に青筋を立てながらこちらをにらみつけてくる。これも毎度のことなのでレイアは気にせずあたりを見回す。
「神田だけ? ファインダーは?」
神田は舌打ちして言葉を吐き捨てる。
「馬車の整備」
つまり、コムイあたりが気を回して救援部隊を送ってくれたのだ。さっきまでの寒々しい気持ちに暖かなものが入り込んでくる。とりあえず凍死はまぬがれたようだ。
「なるほどなるほど、役に立たない神田くんはお出迎えですかーありがたいことですねー」
神田が無幻に手を伸ばしたのを見て、レイアは彼の肩を叩いて笑う。
「うっそうっそ。寒い中ありがとね」
そう言って笑顔で彼の顔を見上げると何とも言えない表情をして神田は押し黙った。その顔にレイアは首をかしげる。