第5章 あなたを追いかけて HQ 岩泉夢
私の足は自然と出口に向かっていた。
だって、私はこの場には来てはいけなかったから。そもそも、なぜ私は今日告白なんてしようと思ったのだろう。あの試合を見て自分は彼にどんな言葉をかければいいというのだろう。
次はきっと勝てますよ? 彼は今年高校三年生だ。
あなたのことずっと応援してました? だから何だというのだ。そんなもの彼らに一ミクロンたりとも力にならない。
浅はかだった自分が恥ずかしい。必死にバレーをしている彼に失礼だった。
出口付近は人ごみでごった返していた。けれど、その場に青葉城西の姿はない。青葉城西は今ミーティングやストレッチの最中だろうか。
最終試合が終わった直後なので、今から表彰式がある。誰も外に出ようとしてない。私には好都合だった。
足早に選手や応援に来た人をすり抜け、出口を抜けた。
さっきの空気とは全く違う。ここにはさっきの熱気がまるでない。
少し出ただけでこんなにも違うのかと思うくらい涼しくてもの寂しげだ。自分にぽっかりと穴が開いたようだった。それも無視して私は歩き出す。
帰り道へと続く階段に一人座っている人がいた。その姿に私は息が詰まる。背中を見ただけでわかる。いつもなら高鳴る鼓動が今は痛く、苦しかった。
でも、横をすり抜けていくことなんてできない。ましてや別の場所から帰ったり、いなくなるまで待つなんてできなかった。
いつも彼に話しかけることさえできなかった自分が、驚くほどスムーズに彼の隣へ腰かけた。
「・・・・・・岩泉さん」
振り返った彼は私の姿を見て目を見開いたが、何も言わず前に向き直る。
「よう、妹」