• テキストサイズ

色々詰め合わせ(短編)

第5章 あなたを追いかけて HQ 岩泉夢


 その瞬間、兄が誰にボールを渡すのか私はわかっていた。

ボールが柔らかい軌道をたどりつつ彼の手のひらに吸い込まれる。息をのんだ。

 彼は渾身の力で相手コートにボールを叩き込んだ。――叩き込もうとした。

 けれど、恐ろしいほどの反射神経で相手側の選手の手が現れた。彼の放ったボールを青城側に撃ち落としていた。
 無情にもホイッスルが鳴る。点数ボードが白鳥沢学園の勝利を示していた。

 白鳥沢の応援が湧き上がる。

 歓声の中、私は奇妙な光景を見た。白鳥沢の選手たちは機械みたいな動きで相手選手に礼をする。

彼らに勝った喜びみたいなものを感じられなかった。それが当たり前みたいな顔してコートから去っていった。

兄や彼は死ぬほど悔しそうな表情をしているのに。兄や彼が負けるのが当たり前みたいに。私はすぐに白鳥沢学園が大嫌いになった。

 スポーツは非情なものだと改めて知った。
/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp