第3章 いつか見た夢のように儚く TOA ガイ夢
うなりながら考えた少女に自分はどんなことを言おうかと考えていた。すると彼女のほうが先に決めたらしく手を打ち鳴らした。
「決めました! ……でも」
そしてなぜか顔を真っ赤にして口ごもる。
「どうなったんですか?」
じっとガイの瞳を見て意を決したように言う。
「絶対秘密ですよ?」
ガイはうなづいた。
「心しておうかがいます」
秋良の瞳がきらめく。覚悟したようだ。ゆっくり息を吐くように秋良はつぶやいた。
「では……わたくし好きなお方がおりますの」
意外だった。その言葉に衝撃を受けながらガイはじっと彼女を見た。
「その方は優しくていつも見守ってくださって、困ったときは助けてくださいますの」
言い切ったとばかりに息を吐き出した。秋良にガイは苦笑する。
「相手の名前はおっしゃらないんですか?」
そこで秋良はこれ以上ないほど真っ赤になった。さっきのルークと同じくらい。さすが、兄妹、いい勝負だ。
「い、いえません」
「なぜ?」
今度は固く口を閉ざし首を振る。こうなったときの秋良の口は開かれない。ガイはいくぶんか消化不良のままわかりましたと言った。胸にしこりを残したまま。
「次はオレの番ですね」
その言葉に秋良は表情が輝く。なぜかその顔をオレは歪ませたくなった。
オレは出来るだけ秋良に近づき。低い声音でささやく。
「ある人に復讐して殺すことです」
どう考えても穏やかじゃない。秋良の表情が凍る。けれど次の瞬間、悲しそうにほほ笑んだ。
「あなたは復讐できる人じゃないと私は思います」
確信しているような断言に反論したい心がむくむくと噴き出してくる。オレの表情が険しくなったのがわかるのか秋良は続けていった。
「あなたは優しすぎる人だから」
だから私のこともかいがいしく世話してくれるんでしょう?とつぶやいた。その言葉で全てをオレは悟った。
もう彼女はわかっていたのだ。それを黙って見ていて何もしないと言っているのだ。
ずるい言葉だと思う。だけれど自分はその言葉に捕らわれ動けなくなっていくのだろう。
「あなたのほうがお優しい。少なくともオレはそう思います」
言ってオレは庭園から立ち去る。
追うように秋良がオレを呼ぶ声が聞こえたが、それには聞こえないふりをした。