第5章 赤い夫との風邪
『ありがと。薬って何?粉?錠剤?』
「錠剤だよ」
『良かった』
「粉は嫌いなのかい?」
『うん。苦手』
「そうか。美桜口開けて」
私は言われたとおり口を開けた。だが、薬は私の口ではなく征十郎の口へと入った。
『は?』
征十郎は私の素っ頓狂な声を無視して口に水を含み、私の顎を左手で掴むと口をつけた。
『んん………………』
私は飲むしかないので頑張って飲んだ。しかし征十郎は離してくれない。征十郎の生暖かい舌が口の中で動く。
『んっ………………んぅ…………ぁ……………』
角度を変えられながら歯をなぞられ舌を絡まされた。
やばい。征十郎に風邪うつる。
私は理性を崩れそうになるのを耐えながらそのこのだけを考えた。だが征十郎は止めてくれない。
『せ………じゅ…ろ………………』
私は征十郎の背中を力の入らない手でバシバシと叩いた。
「………………なんだ?」
征十郎は物足りなさそうに言った。