第5章 赤い夫との風邪
征十郎は先に座って、私の頭を自分の膝に乗せた。私は征十郎の暖かさと匂いを感じ涙が出てきた。
『今日は………………ありがとう。迷惑かけてご、ごめん』
「迷惑なんて思ってないよ。病院へ連れて行くのも看病するのも夫として、家族として当たり前だ。だから謝るな。泣くな」
征十郎は指で私の涙を拭った。私は征十郎の方を向いて腰に手を回し、抱きしめた。
「あ」
征十郎は何かを思い出したかのような声を出した。
『どうしたん?』
「薬飲むの忘れてる。美桜横になってるのに悪いが起きてくれるかい?」
『ん。わかった』
私は征十郎の肩を掴んで起き上がった。一度寝転んだせいかフラフラしてまた倒れてしまった。
『あれ?』
「無理しなくていい。それに心なしか熱が高くなっている気がする」
『じゃあちょっとだけ起こして』
征十郎はソファから降りて立て膝をつくと右手を私の頭の下に入れて左手はお腹に手を回した。
『よいしょ』
私は支えられながらも少し起こすことが出来た。