第22章 赤い夫との同棲
征十郎が車に乗り込んだので、私も助手席に乗り込んだ。
私が乗り込み、シートベルトを着けたのを征十郎が横目で確認すると、車を走らせた。
………怒った?よな。睨んだし。敬語を使ったのがまずかったんかな。でもここ会社やし……。
私はもんもんと怒った理由について考えた。
「美桜」
怒っているであろう本人から名前を呼ばれる。
『は、はい』
私は不意に呼ばれたのでびっくりして、声が裏返った。
「今、俺の感情を考えているようだが、怒ってるよ」
声はそんなに怒っていなさそうだが……。なんせ高校生の時に営業スマイルをしていたほどだ。感情を出さないなど容易いのだろう。
「お前は俺のことをどう思ってる?」
征十郎が私に問いかけた。
私はいつも名前を呼ばれているせいで"お前"という言葉が胸に刺さる。
『社長、上司……。そして彼氏、です』
「ああ、あっている。今言ったように社長という上の立場にはいる。だがそれは前のお前から見てだ」
征十郎は続ける。
「今、俺は彼氏だ。社長でもなんでもないよ。お前……美桜の彼氏だ。だから……会社の外にいる時ぐらいは彼氏として見てくれ」
信号が赤になり、征十郎は隣にいる私に顔を向けて弱く、最後は小さな声で言った。