第22章 赤い夫との同棲
私が近づくと征十郎が私の手首をひっぱって、腰へと手を回し私のお腹に顔をうずめて抱きしめた。
『えっ!?ちょ、ちょっと!ここ会社……!!』
私は離れようと征十郎の方を持って押した。
「……誰も見てないからいいよ」
征十郎は私をきつく抱きしめて、小さい声で言った。
『見てないからじゃなくって………』
私の声もつられて小さくなる。
「美桜」
征十郎は私の顔を見ずに言った。
『な、なに?』
下を向き、私から見て後頭部しか見えない征十郎をみる。
「……キスしたい」
『…………いま?』
「いま」
征十郎はゆっくりと顔を上げて抱きついたまま私を見上げる。
私はその綺麗な顔立ちに見とれ、ゆっくりと頬に手を伸ばした。
征十郎は猫のように私の手に頬すり寄せた。
「キスして」
『……さっきと注文違う』
「したいくせによく言うよ。まったく」
『…………』
「ほら。したいんだろう?」
征十郎は笑みを浮かべる。
『…………この体勢だと無理』
征十郎は手を離した。
「じゃあ膝に乗って」
征十郎は自分の膝をぽんぽんと叩いた。