第21章 赤い夫との結婚
ガチャッ
私はトイレの個室を閉めた。
『はぁぁぁぁぁぁぁ』
私はドアへと寄りかかり、盛大なため息をついた。
『もう、私最悪やな……』
自己嫌悪。それが1番今の心境に当てはまる。
私は心臓を押さえながらつぶやいた。
とりあえずさっきから鳴り止まない胸の音をどうにか沈めようと、どんどんと自分の胸を叩いた。
『つっ……。なんなんこれ…………』
胸の音は止まなかった。
私は目をつむり、原因を探そうとした。だが、目をつむった瞬間に現れたのはさっき私に向けられた征十郎の笑顔だった。
『赤司くん…………。なんで出てくるん』
私は目を開けた。
もう一度つむって見たがやっぱり出てくるのは征十郎の綺麗な顔で。私は1番無いと思っていた事を口に出した。
『赤司くんのこと好きなんかな…………』
私たちはあくまで社長と秘書。もしくは社長と部下という関係だ。好きになることなど言語道断だと思っていた。
私は古くからの友人である希望の言葉を思い出した。
"恋するとな!その人の顔とか仕草とかが浮かんできたり一緒にいたり考えたりするとむっちゃ心臓の音言うねん!!"
まさしく私の今の状況はそれだった。