第21章 赤い夫との結婚
「赤司様。本日はご来店いただきありがとうございます。お席のほうへご案内いたします」
料理長らしい白い服を着た人がやってきた。
料理長まで来るとは……。赤司くんてすごいんや…………。
私は1人、征十郎との距離を感じていた。
「ああ。お願いするよ。美桜、行こう」
『え?あ、うん』
私は征十郎の少し後ろを歩いた。
案内された場所は個室で畳に座って食べるところだった。左を見ると1面ガラス張りでビルの光がキラキラと輝いていた。
「改めまして、本日はご来店いただき誠にありがとうございます。料理長の藤村です。本日のメニューは…………」
たくさん地方の食材や海の幸、お肉など紹介されていったが全然わからず聞き取るのを諦めた。
「そして、本日の品はA5ランクの近江牛の希少部位を焼いて、厳選された九条ネギをふんだんに使った塩ダレと絡めたものです」
「九条ネギは京都でも食べてたかい?」
『うん。そりゃね。食べてたよ。最近は食べてないけどね』
「京都出身なのですか?」
『はい。就職とともに上京しました』
「ではサービスで京野菜を使ったお漬け物をお付けします」
料理長のおじさんはにこりと笑って出て行った。