第10章 10
搭乗時間の3分前。
私はそろそろ待ち合いロビーに移ろう、とすっかりぬるくなったコーヒーを一息に流し込み、カフェを出た。
カフェをでると、ちょうど飛行機が到着したのか、出口には人だかりができていた。
再開を喜ぶ声、解散の挨拶などいろんな会話が聞こえてくる。
その光景をぼんやりと眺めていると、空港内のアナウンスが私の乗る飛行機の搭乗開始を告げた。
刹那、見慣れたシルエットが人と人の隙間に見えた気がした。
明るいオレンジがかった長い髪。
スラッと伸びた背。
そんなまさか。
心の準備をする間もなく、足がその人が見えた方向に勝手に進む。