第10章 10
私は大きな荷物を抱え、空港にやってきた。
借りていた携帯を返却し、搭乗の受付を済ませ、大きな荷物を預け、空港内のカフェで搭乗時間までのんびりと時間を潰すことにした。
一年前、大きな不安を抱えながらここにきたことを昨日のことのように思い出すことができる。
言葉も通じない、文化が違う、顔のつくりも違う、そんな異国で一人きちんと勉強ができるだろうか、と。
現実は決して一人ではなかった。友人や先生、カフェのマスター。
狭い範囲ではあるが、多くの人が私を気にかけ、よくしてくれた。
おかげですっかり不安は解消され、今では名残惜しさすら感じている。
しばらく、この地ともお別れだ。
朝日奈さんとも、このまま会えなくなってしまうのだろうか。