第4章 4
本番当日。
いつもはあまり緊張しないのだが、今日はなんだか違った。
体の奥がいつまでもざわざわとしているような気分だ。
本番前、このざわざわを少しでも抑えるためにホールのまわりをぐるっと歩くことにした。
音楽院の敷地内はいつ歩いても美しい。
特に今日のようなよく晴れた冬の夜は空気がよく澄んでいて、より美しく見える。
全身をほぐすように歩いていると、懐かしい後ろ姿を捉えた。
「朝日奈さん!」
そう呼ぶと、ゆっくりとこちらを向く、懐かしい顔。
初めて見たときはとてもびっくりした、男の人の姿の朝日奈さん。
初めて見た時の胸の高なりとはまた違う胸の高なりを感じる。
「さくら。久しぶり」
このコンサートに誘ったあの日以来会っておらず、お互い忙しくて連絡もロクにとれていなかったのだ。