第4章 4
「Brava!Un grande diva! 」(すばらしい!なんて素晴らしい歌姫だ!)
「Grazie,mastro!」(ありがとう、先生!)
「Sei innamorato?」(恋でもしたのかい?)
「No! Sicuramente no!」(ないです!そんなことないですから!)
恋なんて誰に…
そう思った瞬間、朝日奈さんの顔が思い浮かんだ。
頭を振って否定する。
朝日奈さんはただの友人。
そう否定するが、この悲しい気持ちはなぜ生まれてくるのか、私には検討もつかなかった。
本番に向けてレッスンはどんどん厳しくなっていく。
泣きながらその日を終えることも珍しくなかった。
しかし、それを乗り越えるほど、私の歌はどんどん洗練されていくのだ。
どんなに辛くても、やめない。
私が唯一自慢できるものなのだから。