第3章 3
ぱちぱちと柔らかなキィのタイプ音が聞こえてくる。
どうして突然そんなことを思ったのだろう。
「ん…?」
いつの間にか眠っていたようだった。
体を動かすと、ハラリと何かが落ちる。
「あ…」
少しだけタバコのにおいのするブランケット。
「おはよう。よく眠れた?」
ブランケットをまじまじと眺めていると、朝日奈さんから声をかけられた。
「ご、ごめんなさい!いつの間にか…えと、ブランケット、ありがとうございます…」
「謝ることはないだろ?寝顔と寝息をもらったからトントン」
わっと顔が熱くなる。
「さくらは危機感っていうのを持ったことがないの?」
「危機感…?」
そう、危機感。
そういいながら朝日奈さんは立ち上がり、私の横に腰掛けた。
「普段は取材の合間に会うことが多いからどうしても女装してることが多いけど、別に俺は女になりたいから女装してる訳じゃない」
言いたいこと、わかる?
と聞いたこともない、掠れた色っぽい声で耳元で囁かれる。
顔どころか全身が熱くなる。
「ま、そんな風にしか思われない俺が悪いんだけど」
朝日奈さんはぱっと身を離し、大きく背伸びをした。