第3章 3
すぅ、すぅ、という聞きなれない音が聞こえてきた。
取材の内容をまとめる手を止め振り返ると、本を持ったままソファで眠りに落ちているさくらが目に入った。
「危機感っていうのがないのか…?」
きっと女装なんかして接するから悪いのだ。
気のいい姉さん、くらいにしか思われてないのだろう。
あの人の時もそうだった。
自分で自分の首を閉めていると理解しながらも、女装をしてまで彼女のそばにいたかったのだ。
俺は、この子をどうしたいのだろうか。
ただ、なんとなくあの人に似ているからそばに置きたいだけなのだろうか。
「最低な男…」
近くにあったブランケットを彼女にかけてやり、ぬるくなったコーヒーに口をつけ、まとめ作業にもどった。