第3章 3
「はい。お疲れ様。ここの3階がアタシの部屋」
そういいながらアパートのエントランスにはいり、階段をのぼる。
朝日奈さんは部屋の鍵を開け、物を脇によけながら私を招き入れてくれた。
「いらっしゃい。散らかっててごめんね」
書類や本が山のように積まれていて、いくつかがタワーになっている。
部屋の右壁側の窓のそばにはおおきな机、その上にはノートパソコン。
部屋の中央にはソファと小さな机、手前にはキッチンがある。
その奥はきっとプライベートルームへとつながっている廊下への扉なのだろう。
朝日奈さんは床から一冊の本を拾い上げ、渡してくれた。
「はい。いろいろあるけど、とりあえず近くに一冊あったから。そこのソファにかけて読んでて。アタシはちょっとシャワーを浴びてくるわ」
「は、はい…」
私は言われるがままにソファに腰掛け、その横にカバンをおく。朝日奈さんは奥の扉を開けてシャワーを浴びに行ってしまった。
しばらくすると、シャワーの水音が聞こえてきた。
ドギマギしながらも、私は受け取った本を読みはじめる。
朝日奈さんが書いてる小説は、いわゆるノワール小説というものに分類されるのだろう。
ミステリーを読むことはあるが、こんな風に犯人を主人公として書かれている作品ははじめて読む。
いつもとは違う視点で物語が続くのでとても新鮮だ。
この先の展開にドキドキしながら読んでいると、奥の扉が開いた。