第3章 3
ちょうど30分後、部屋のドアがノックされ、聞き慣れた声が私を呼ぶ。
「はい!今出ます!」
カバンをもって扉を開けると、綺麗な女性の姿をした朝日奈さんが立っていた。
「おはよう、さくら。30分前に電話しておいてよかったわね」
「すみません…助かりました」
私は部屋の鍵をしめ、朝日奈さんについていく。
アパートの前には真っ赤な車が止めてあった。
「ちょっとタバコのにおいがするかもしれないけど、窓開けておくからガマンしてね」
「あ、煙がなければ大丈夫です」
「そ。ならいいわ。窓開けてもうるさいだけだし」
真っ赤な車に乗り込み、朝日奈さんはエンジンをかけ、滑らかに発車させる。
「今日は女装なさってるんですね」
「昨夜、どうしても足らない部分の取材をしててね。その帰りよ」
「…あの、本当に無理なさらなくても…」
「無理じゃないわよ。むしろアタシ一人じゃまとめてる最中に寝ちゃいそうだからその監視してて欲しいくらいよ」
「素直に休まれた方が…」
「早くまとめ終われば早く休めるのよ」
「…うーん…」
20分ほど車を走らせ、到着した先はおおきなアパートだった。