第2章 2
「今日は本当にありがとうございました。お食事代まで出していただいて…」
「いいんだよ。俺がさくらと一緒に行きたかっただけなんだから」
朝日奈さんは相変わらず優しい笑顔でそう答えてくれる。
「あ、あの、実は、今日お話ししててとても興味が出たことがあって…こんなお願いするの、図々しいかもしれないのですが…」
ずっと気になっていた。
そして、今日。朝日奈さんの話を聞いて強く思ったこと。
「朝日奈さんの小説、読んでみたいです。…もし、お持ちならば、貸していただけませんか?」
そうお願いをすると、朝日奈さんはおかしそうに笑った。
「なんだ!そんな深刻にいうから何事かと思ったらそんな事?いいよ。俺の部屋に来てよ。読ませてあげる」
部屋に来てよ。一瞬その言葉が何をさしているのかよくわからなかった。
「お、お部屋にですか?」
「なんだかんだ、取材したことをまとめたりしなくちゃいけないしね」
朝日奈さんは肩を竦めた。
「お忙しいのならそんなに無理をなさらなくても…」
「いいの。部屋で静かに本を読むだけだろ?それとも、静かに読めない人なの?」
ちょっと意地の悪い質問だ。
「そんなことはないですけど…」
「じゃあ決まり。今度の日曜ね。Buonanotte,Bella(おやすみなさい、お嬢さん)今日は楽しかったよ」
朝日奈さんはそういって私の髪を軽く撫でて帰ってしまった。
ドアを閉めて一息。
「なんだか、すごいお誘いを受けた気がする…!」
私はへたり、とその場に座り込んだ。