第2章 2
「Che cosa hai fatto di bello?」(何かいいことでもあった?)
何度目だろうか。
今日は人に会うたびそう聞かれる。
「Cosi cosi」(まぁね)
手のひらをくるくると回しながら、困った笑顔でそう答えた。
そんなに顔に出ているだろうか?
緩みきっているのだろう頬をパシ、と叩く。
「気合いれなくちゃ」
こんな浮かれていてはダメだ。
でも、せっかくいい気分なのだから、そこはうまくコントロールして歌に生かそう。
日曜日、もっと素敵な気分で朝日奈さんに会えるように。
私は重たい楽譜を持ち直して、レッスンの行われる部屋に向かった。