第2章 2
「さくらは一人っ子?」
「はい。わかりますか?」
「なんとなくね」
よくいわれるんです、私はウェイターさんから水をもらいながら答えた。
「朝日奈さんは…言わないでくださいね。当てますから。…妹さんがいそうです」
「14分の1あたりかな」
朝日奈さんは目をつぶってうんうん、と頷いている。
「なんですか?その半端な数」
「知りたい?それともまだ考える?」
「うーん…えっ…まさか、あと13人兄弟か姉妹が…」
「ご名答。勘のいい子は好きだよ」
イタズラっぽい笑みを浮かべている。
そんなに兄弟姉妹がいる人が現実に存在するなんて、と私は目を白黒させた。
「朝日奈さんって、事実は小説よりも奇なり、っていう言葉をとてもよく体現されてますね…」
「よく言われるよ。俺には13人…いまは14人か。兄妹がいる。ちなみに俺はそのうちの四男。兄弟の話といえばちょっと面白いことがあってさ…」
去年、朝日奈さんのお母様は再婚し、新たに妹ができたそうだ。
ちょっと複雑な家庭環境に、はたして突っ込んで聞いていいのか迷ったが、朝日奈さんは気にしなくていい、と優しく声をかけてくれた。
「で、その妹さんがなかなか可愛い子でさ…」
その妹さんはとてもいい子で可愛らしいそうだ。
時折妹さんを取り巻いて不穏な空気が流れることもあるそうだが、朝日奈さんは特に気にしている様子ではなかった。
「不穏な空気になる事があるのに、朝日奈さんはあまり気にしてないようですね?」
「あぁ、大丈夫。だって雅兄が大切に大切にしているからね。誰も手出しできるわけがないよ」
小児科医をされている一番上のお兄さんのことだ。
「…怖い方なんですか?」
「いいや、全然。むしろヘタレだね。…なんていうんだろう?この前みた感じだと、今の雅兄の邪魔は誰にもできない。そんな風潮があったんだよね。きっと妹さん自身も雅兄のことを絶対的に信頼してるから、なのかもね」
なんだかよくわからないけど、朝日奈さんには私に、これ以上深く突っ込ませる気はなさそうだった。