第2章 2
すっと香りを嗅ぐと、上品な甘い香りが広がる。
少しだけ口に含み、その香りを楽しみながら味わう。
「マスカットみたいな香りと甘さがしますね」
「気に入ってもらえた?」
「はい。とてもおいしいです」
朝日奈さんは嬉しそうに笑いながら、水を飲んだ。
せっかくおいしいお酒だが、朝日奈さんは車を運転してくれるので飲んではいけない。
すこしだけ申し訳ない気持ちになりながらも、心の中で感謝の言葉を並べながらこのおいしいアスティを味わうことにした。
前菜には牛肉のカルパッチョだ。
「カルパッチョってお魚のイメージがありました」
「もともとは牛肉らしいね」
しっかりマリネされ、さわやかな風味のカルパッチョ。
「すごくおいしいです。さわやかでワインにあいます」
プリモ・ピアットにはミラノ風リゾット
セコンド・ピアットにはオッソ・ブーコという仔牛の骨つきのスネ肉をブイヨンやトマト、香味野菜で煮込んだ肉料理がでてきた。
どれも素材がいいのか、雰囲気もあってなのか、少食の私でもペロリと平らげられてしまう。
はじめは高級レストランというアウェーな場所故にガチガチに緊張していたが、朝日奈さんの何気無い会話もあってか、今は素直に楽しめている。
普段、オープンカフェでの短い時間では話せないようなお互い自身の話に花が咲いた。
朝日奈さんが体験してきた小説よりも小説らしい実体験、私の音楽を学ぶ人の生活。
一番驚かされたのは、朝日奈さんの家族構成だ。