第2章 2
告げられたお店の名前は、イタリアの隠れた名店といわれる高級店。
この間友達が本当に美味しかったとうわさ話をしていたお店だった。
「そ、そんな高級なお店…!」
「あら、知ってたの?」
「この間友達が話してて…。その、ちゃんと綺麗にして行かないとダメなところですよね」
普通の家庭で、いわゆる庶民として慎ましく生活してきた私には縁遠い場所だ。
同じレベルのお店に行ったこともなければ、行きたいと思ったことすらない。
「普段練習を頑張ってる真面目な学生にオトナのアタシからプレゼントよ。来週の水曜日、空いてる?」
「あいてますけど…そんなプレゼントだなんて…」
「人の好意は素直に受け取っておくべきよ。ちょっとは甘えることも覚えなさい」
唇を尖らせながらそういう朝日奈さんはどこか可愛らしくて、ワンピース姿も相まってちょっとワガママなお嬢様のようだった。
そんな風に思っていると、顔が笑っていたのか、何笑ってるのよ、と頬を軽くつねられる。
「いたた…もう。朝日奈さん、結構力強いんですから、ちょっとは手加減してくださいよ」
「あら?そうだったかしら?」
いたずらっ子のような目の輝きをしている。この目の輝きにはどうにも降参せざるをえないのだ。