第2章 苦しみを忘れた少女
麗華side
「フィル…っ……! 嫌…っ!! …はっ!!」
上半身をガバっと起こすと、鎖骨の右側の方がズキっと痛んだ。
「うっ…。……これは…」
痛んだところを優しく触れてみると、ザラリとした変な感触がした。
そこを見ると、白くすこし汚れた包帯が巻かれている。
「……」
少なくともここに傷を覆ったのは間違いなさそうだ。
周りを一瞥すると、どうやら私の部屋。あれから幾日経ってしまったのだろう…。
とにかく、誰かを呼びに行こうと部屋を出ようとして、ベッドから足を下す。
「…っ!! 麗華様…」
扉の開く音がしてそちらを見ると、ルーファスが驚いた顔をして立っていた。
「ルーファ…ス…。………っ゛っ!!!」
立ちあがった瞬間に、再び鎖骨の痛みが全身に広がる。その痛みに顔を歪ませ、少し倒れそうになる。
瞬間に、彼はこちらに動いて私を抱きかかえた。
「…!! ルー、ファス?」
「あまり無理をしないでください…。そんな状態で」
一瞬にして彼に体を支えられ、何とか持ちこたえる。普段から何に対しても表情を変えない彼が、心配そうな声を私にかけてくれた時、私は目頭が熱くなった。
彼の温かな体温が皮膚を伝わって、私の鼓動を早くする。
「………」
「……」
「おーい! ルーファスー? ルーファ……ス…?!」
不意にへクターの声が聞こえ、勢いよく部屋へ入ってくる。
「えっ?!! ちょっ?! えっ?!!! お前麗華と何やって…!! ってか麗華も目ぇ覚ましたのかよ?!! ってそうじゃなくて…!! えっ?! でもっ…傷は?!! 大丈夫なのか?!! っていうかルーファスお前っ!!」
「……相変わらずのようね…へクターは」
「そうですね。相変わらずバカです」
「はっ?! 何で?! 何でそうなった?!! 酷い!!」