デジタル世界に迷い込んだ選ばれし8人の他にあと二人いた?
第8章 人間界とデジタルワールド
☆☆~秋side~☆☆
ヤマトと小姫が浜辺で話しているのを盗み聞きしてから、俺の頭はそればかり考えていた。俺の心を見透かされているようで思わずドキっとしてしまう。
俺は………小姫を…………。
そんな風に思われていたなんてショックが隠せなかった。何度もソラやジョウ、さらには太一にさえ様子がおかしいと心配されてしまう始末。小姫はその日から自分から俺に話しかけなくなった。多分俺が来るのを待っているのだろう。
そんななか機会が訪れた。
「んー!やっと着いたぜ」
「そうですね。これからどうしますか?」
「取り敢えずここらへんを探索すっか。」
チャンスだとおもった。俺は真っ先に小姫を連れ出した。
「……俺は………」
だがいざ小姫を目の前にすると何も言葉が思い浮かばなかった。ごめん?そんな風には思っていない?どれも上辺だけの言葉に聞こえる。
「…………秋くんには感謝してるし、私の大切な、大好きな家族だとも思ってるよ。」
中々言葉を紡がない俺に代わり小姫は口を開いた。そして自分を大事にしてと言われた。それは俺が小姫に言いたかったことなのに。
「今のままだと秋くん。私がいなくなった後、私の後を追うとか言い出しそうだから。」
……………そこまで見抜かれてたのか。
俺は溜息をついた。小姫にはすべてお見通しのようだった。自分が長い命ではないことを知りながら全部自分で抱えてしまうつもりなのだろう。
小姫。お前はそれでいいのか?
「私は私で精一杯生きるよ。だから、秋くんも秋くんで精一杯生きて。約束。」
精一杯生きる。その言葉に嘘はない。だが、お前は抗わずあっさりと逝ってしまうのだろう。
「……ああ。」
そう言うと満足そうに微笑む小姫。その笑顔はずるいと思う。何も言えない。先にお前に生きると言われてしまえば何も言えないじゃないか。他ならぬ生きながらえるつもりはないお前に言われる筋合いはないってのに。
久しぶりの指切りは視界がぼやけて見えなかった。