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melancholia syndrome

第5章 大人と子供


「ん?九条もう帰ってたのか」

先生は荷物を置くとそう尋ねてきた。

「えっと…はい……」

ここ数日はテスト勉強で忙しかったし、先生もテスト作りで忙しかったからまともに顔を合わすのはあの夜以来。

「昼飯はまだか?」
「そ、そうですね…」

緊張して声が上ずってしまった。

先生は少し首を傾げるとキッチンへと向かった。

トクン、トクンと胸が鳴る。

やっばりまだ先生と顔を合わせるのは…

「九条!」
「え、は…はい!」

キッチンから先生の大きな声が聞こえた。

「ちょっと今食材切らしてるから外に食いに行くぞ」
「へ?」

キッチンから戻って来た先生の言葉に虚を突かれる。

「君もまだ食べてないんでしょ?ご飯はしっかり食べないと」

先生は真面目な顔でそう言うが私が気になったのはそこではない。

「えっと…一緒にですか?」

まさか、一緒に行くの!?

「当たり前だろ、俺もうぺこぺこなんだよ」

そう言って先生は私の手を引き外へと連れ出した。

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「メニュー決まったか?」

問答無用で連れて来られたのはハンバーガーショップ。

「えーっと…じゃあ、これで」

私がチーズバーガーのセットを指差すと先生は素早く注文した。

「えー!?君こんだけで足りるのー?普段からあんま食べてないけど、成長期なんだからもっと食べなさいよ」

先生は適当な席に座ると運んできたトレーを見てそうぼやく。

何だかお母さんみたいな事を言うんだな…

「でも、これ先生のお金ですし…」

何やかんやしている内に先生は勝手に私の分まで払っていた。

だから、あまりたくさん注文するのも申し訳ないと思う。

「いーよ、別に。…これはこの前のお詫びでもあるから」

先生はハンバーガーにかじりつくとそっぽを向いてそう言った。

「お詫び…?」

一体何のお詫びなのか分からず首を傾げると先生は少し申し訳なさ気に向き直った。

「この間は悪かったよ…」
「あっ…!」

少し赤くなった先生の顔でようやく私にも分かった。

先生はあの夜の事を言っているのだと。
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