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melancholia syndrome

第5章 大人と子供


「それじゃあ、今日の授業はここまで」

現国の先生は教科書を閉じると教室から出て行った。

いつもならすぐに騒がしくなる教室も今日は落ち着きはらっている。

何故なら…

「あ"〜!もう、ストレス溜まる!」

彩葉ちゃんはそう言うとノートを放り出した。

「もう、中間テストの時期だもんね〜」

そう言って私が苦笑いすると、勉強嫌いの彩葉ちゃんはバタッと机の上に倒れてしまった。

季節は初夏、高校生活初めての中間テストが近づいていた。

「唯はいいよね〜、苦手科目とか無さそう。先生に当てられてもスラッと答えちゃうし」

彩葉ちゃんは恨みがましそうな目でジロリと私を睨むと溜息を吐く。

「そんな事ないよ!私にも苦手科目ぐらい普通にあるし…」
「そうなの?」

実を言えば数学は少し苦手だったりする。

中学までは思った事は無かったが、高校に入ってから数学の難易度が高くなった事を私はひしひしと感じていた。

でも、担任の先生の教科だし赤点は取りたくない。

「じゃあさ、勉強会しようよ!光輝とか隼人も誘ってさ」
「え?いいのかな…」

五十嵐君と友永君はサッカー部に入っていて普段から部活で忙しい分テスト週間は集中して勉強したいはず。

それなのに誘ってしまって大丈夫なのだろうか。

「いいって、いいって!ああ見えて光輝は頭良いし、分からない問題があったら教えてもらえるよ!」
「それは有難いけど…」

本当にいいのかな?

「じゃあ決まり!光輝達にメールしとくね!」

彩葉ちゃんはそう言うと猛スピードでメールを打ち始める。

ここまで勉強会に乗り気な彩葉ちゃんは初めて見る。

もしかして、五十嵐君の事が好きなのかな…?

そんな事を考えている内に彩葉ちゃんの携帯に返信がきた。

「やった!大丈夫だって!」
「そっか、よかったね」

満面の笑みで振り返る彩葉ちゃんにそう答えると彩葉ちゃんは不敵に笑った。

「これでテスト課題も写させてもらえるっ…!」

どうやら、これが本音のようだ。
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