第5章 初めて
勇生side
痛々しく腫れた頬。夏なのに、肌を隠すためであろうに着たと思われるパーカー。驚いた顔。
マリアの姉が言ってた通り…か。
辛いくせに。辛いくせに誰かに頼ろうとはしない。
……それはやっぱり、あいつの事を少しでも覚えてるからか。
…それとも…?
理花side
「っ!!」
私は彼らの方を見てから、すぐに視線を落とす。
―――気付かれたら…いけないっ…―――
―――見られたら…―――
「…理花…?」
「っだ、大丈夫ですっ。そ、それより、なんでみなさんはここに…?」
「理花ちゃんが休んだって聞いたから、体調はどうかなーって。teacherに家まで聞いてきちゃった」
マリアさんは明るい言葉で、けれど顔は少し心配そうに言う。
「す、すみません…」
「あやまんなくて大丈夫だって」
マリアさんがちょっとだけ笑顔を見せながら言うと、景一さんの隣から、愛里が声を出す。
「で…大丈夫? 理花」
「え…あ、うん。大…丈夫」
私は隠すように左頬を抑えながら俯く。
「無理しちゃだめだよー。もうすぐ文化祭だし」
「あぁ、そうだね…。た、多分まだ明日は学校行けないや」
「…そっか。おっけい!」
愛理は少し間を空けながら笑って言ってくれた。その間も、私の鼓動は緊張でドクドク波打っている。
「じゃあ、長居しても悪いし、俺ら帰るよ」
「はい。すみませんでした…」
最後にそう言うと、祥太さんは「いいって」と笑いながら私に背を向けて歩き始めた。
それに続いて他も続く…。
「…勇生…? 帰るよ?」
勇生さんは別で。
「俺、こいつにちょっと用事がある」
「えっ…私……ですか?」
私の方をじっと見たまま、視線をずらそうとしない勇生さん。その目はいつもと打って変わって真剣な目だった。
「勇生…?」
「わりぃ。先行ってろ。これは俺とこいつの話だ」
勇生さんが言うと、みんなはしぶしぶといった感じで歩いていく。唯一祥太さんだけが最後まで渋っていたが、諦めたのかすぐに歩いて行った。