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ありがとうが言えなくて

第5章 初めて



 勇生side

 部屋の明かりを消し、テーブルランプだけを点けておく。その光をうつろな目で見ながら、俺は一言呟いた。

 「何やってんだ…」

 そう口で言ってみると、本当に何をやっているか分からなくなってきた。

 ―――あなたなんかにっ何が分かるんですか!!!―――


 「俺は…あんな事言わせて、何がしたいんだ…」

 あいつのすじょうも分かってるくせに、あいつだって辛いだろうに、分かったような事を俺は…。何なんだよ。

 「嫌われたな……」

 ……っていや。だから何だよ。俺があいつに嫌われようが何だろうがどうでもいいだろう。なのに、何だ、俺は。この際におよんで、あいつに嫌われたか嫌われてないかなんて、気にしてどうする。

 「………」

 俺はぼーっとしたまま、視線を動かしていくと、途中でピタリと目がとまる。
 その先には、机の上に無造作に置かれたノートが1冊あった。


 「亮………。俺には…何が出来るのか……いや。俺は、何をすればいいのか…分からない…」


 誰に言うでもなく、ただそう呟いた。

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