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ありがとうが言えなくて

第4章 思い出してる、思い出せない



 愛里side

 私が声をかけると、彼女は驚いたように勢いよくむせ始めた。落ち着いてきても何だかんだで驚きは収まっていないみたい…。
 箸も持たぬまま、カタカタカタ…と小さく震えている彼女を見ながら、私は小さく笑った。

 同い年なのに、ちょと可愛く思えてしまう。

 ―――にぃの言ってた通りの子だ―――



 理花side

 「それ全部理花ちゃんの手作り?」
 「あ、はい…」
 まぎれもなくきごちない返事をする私を見て、私のお弁当を指さしていた彼女は「クスっ」と笑った。
 「同い年なんだから敬語はよしてよー」
 「ええぇえっ?!」
 「えっ?! 逆になんでその反応?! タメはダメなの?!」
 「いきなり初対面でタメ語とか、なんかの青春小説ですか?!」
 「何の事?!」

 (※一応コレ青春小説です。)

 「え、でも…」
 「いいから! はい、タメで喋ってみて!」
 「え…こ、こんにちは…」
 「何で?!」
 彼女は頭をボサボサとかき回すと「にぃ達がいればなぁ…」と目をつむりながら言った。
 「にぃ」すなわち、兄の事である事は分かるが…。
 「に、にぃ…?」
 彼女の言った言葉に首をかしげていると、何度も聞いているあの声が聞こえた。

 「理花ー!! おーい!」






























 また―――。
 またあの感覚―――。





























 「理花ー!」























 一瞬。一瞬だけ。またあの少年が見えた。

 祥太さんの声を聞くたびに、過去の記憶なのであろう「彼」が重なる。

 私に手を重ね、二っと笑う彼。

 真っ黒に焼けた肌、ぼさぼさの髪、少し幼く見える顔。全てが懐かしく感じるのに、でも誰かは分からない。





























 「理花ー! 早くしろって!」


























 あなたは…誰…?


































 少し目頭が熱くなったであろうか…。





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