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ありがとうが言えなくて

第4章 思い出してる、思い出せない


4つ目の授業が終了し、生徒たちがグループを作りながら、昼食を目的に、色々な場所へ向かう。外、ラウンジ、体育館の裏…。また、特に移動もせず教室で食事するものもいて、一人静かに教室で食べるものとしては、あまり良い印象は持てなかった。

 「…はぁ……」

 最近ため息の数が増えた気がするな…と、呑気な事を考えながら、私は自分の席でお弁当を開き始めた。

 「あぁ。今日アタシ喋ってみたい子がいるんだぁー。だからちょっとパスー!」
 「えぇー? マジでー? 付き合い悪ー!」
 「じゃあウチら外行って食べてるわー」
 「オッケー!」
 廊下の方からうるさい声が聞こえ、一人の少女が入って来た。多分、会話中での「パス」をした人だろう。喋ってみたい人がいるなら、他の友達も一緒にすればいいのに…。
 そんなお節介なことを考えながら、一人お弁当のスパゲッティに手をつけようとしたその時。
 「ねぇ理花ちゃん? 一緒に食べない?」
 「ゲフっ!!」
 大きく「ゴホッゴホッ」とむせる。私のその様子を見ると、このむせている元凶である少女は「だっ大丈夫?!」と私の背中をさすりだした。
 何故いきなり声をかけられたのか全く分からなく、とりあえず落ち着くまで十分むせかえった私は、箸を乱暴に置いて少女の方に振り返った。
 「いきなりむせるからびっくりしたー! それより、一緒に食べない?」
 「?!!」
 今度こそむせたりはしなかったが、いきなりの事すぎて、驚いた、という感情しか湧いてこなかった。
 「…ど、どうぞ…」
 「ありがとー」
 すると少女は、私の目の前の席を勝手に移動し始め、それが終わるとドカリとその席に座った。
 「…あの、勝手に座って大丈夫なんですか…?」
 「ん? ああ。竹田っちココ座ってイイ?!」
 私が顔をゆがませながら聞いてみると、彼女は教室の後ろの方にいた男子に、大きな声で聞く。すると「いいよー!」と大きな声が返って来た。
 「ってことでオーケー!」
 そう言いながら爽やかに笑い、自分のお弁当を開き始めた。
 「……」
 ここまで来て、やっと自分の状況が分かった私は、内心汗をかいていた。

 ―――喋りたい人って私いぃぃぃいいいいぃ?!!!!
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