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ありがとうが言えなくて

第4章 思い出してる、思い出せない


 「……。…りょ…う……っ!!!」
 真っ白な天井。真っ白なベッド。真っ白な棚。パッと目を開いて見えたのは、部屋中白づくしの、いかにも病院だと確信させられる場所だった。
 部屋は個室のようで、私以外には誰もいなく、あの4人もいないようだ。
 「ふぅ」と短くため息を吐くと、何故ここにいるのかを考えてみる。
 「…私……あの時倒れて…それで…」
 何だろう。さっきまで何かを見ていた気がするのだけれど…。あれは…。……。
 だめだ。思い出せない…。
 それを一生懸命に思い出そうとしていると、唐突に部屋の扉が開いた。
 「お。起きてんぞ」
 最初に入って来たのは、祥太さんと同じような金髪の、背の低めな男の人だった。
 「大丈夫? とりあえず病院まで運んできちゃったんだけど…」
 すぐに入って来たのは明るい茶色の背の高い男の人。その後少し間を空けて入って来た祥太さんと女の人。
 …まさかの全員居るっていうね…。
 「先生が言うには軽い貧血らしいけど。どう? 体調は」
 「…あ。大丈夫です。すみません…」
 全員椅子に腰かけると「いいのいいの」と笑った。…だめだ。気まずい。
 「まだこいつらの名前聞いてないよな?」
 「まあ…はい」
 私がノリ悪く言うと、大きく手を挙げて「Hey! じゃあmeからで」とノリよく女の人が立ちあがった。
 「I'm永瀬マリア。二年生。出身はイギリスよ。あと好きなタイプはイケメン。よろしくね」
 「最後の情報必要か?」
 ぼそっと金髪の男の人が言うと、ほっぺを膨らませて「ウケが必要でしょ?! ウケが!」と怒りだした。
 「じゃあ、あんたもウケ狙いなさいよ」
 「なんでだよ」
 「はぁ」とため息を吐くと、男の人は座ったまま喋りだした。
 「結城勇生。二年生。好きな食べ物は青じそドレッシング」
 「十分ウケとれてるわよ?」
 ……え。ちょっと待って。何でこの人たち自己紹介モードでこんな楽しそうなの? 嫌なんですけど。私自己紹介するの。
 
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