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ありがとうが言えなくて

第4章 思い出してる、思い出せない


 「理花! 早く帰ろーぜ!」
 中学校の通学かばんの、肩にかける部分の片方だけを肩にかけ、私に言ってくる亮。
 真っ黒に焼けた肌、ぼさぼさの髪、少し幼く見える顔。どれをとっても小学生に見える亮は「早くしろー」と私をせかした。
 「ちょっと待ってってば!」
 「ったく……っと!」
 亮の方でガタっという音がしたので、すぐに見てみると、女子が亮のすぐ近くで尻もちをついていた。
 きっとふらふらしていた亮にぶつかったのだろう。
 亮は真顔で女子の方へ向き「大丈夫…か…?」と言ってから表情が固まった。
 その女子は学校指定のスカートを割と短めにはいていて、それは安座をすれば下着が見えるほどで……。
 「キャアーーー!!! 変態ー!!!」
 スパアァァン!! といい音がして、その女子はギャーギャーと罵りの言葉を亮に向って発し出した。
 「見たでしょ!!」
 「みみみみみみっ見てない! ピンクのパンツなんて見てないから…って、いってえぇぇ!!!」
 また先ほどと同じ音がして、女子はすぐさま玄関の方へ走って行った。
 「えぇー……」と言いながら赤いほほをさすっている亮を横目に「変態だわぁ…」と言いながらそこを通り過ぎようとすると、亮は「おい! 待てよ!!」と追いかけてきた。
 「女子の下着見るとか……ないわぁ」
 「おい!! 今のどう見ても不可抗力だろ!!!」
 「何の事だろー」
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