第1章 日向夢小説
―――いかほど経った頃か。
日向が仕方なしに部屋へと戻ろうとしたとき…
「兄上?」
たくさんのかんざしで髪を結いあげた雲雀が廊下の端から現れた。
月の光のように優しい笑み。
リンと涼しげな音のするかんざし。
早足で我が元へと駆け寄るの仕草が美しくて。
雲雀、と呼びかけて「家光…」と言葉を上書きする。
「家光、公務は終わったのか?」
雲雀が小さく頷く。
「そうか。今日も大変だったな」
またも雲雀が小さく頷く。
「お前の元気な顔が見れて良かった。早く休むのだぞ」
雲雀は―――頷かない。
「兄上、わたし…その…」
(瞳を数回揺らせると)
「長丸に会いとうございます。お部屋に行ってもいいですか?」