第1章 プロローグ
(どうしよう...、怒らせちゃった...)
早くなる鼓動を感じながら
この状況をどうするべきか働かない頭で必死に思考を廻らせた
ピチャ...
「ひっ...!!」
突然耳に生暖かい感覚が走った
彼の吐息が耳にかかって頭が真っ白になる
「俺の事、二度と忘れないようにお前に刻み込んでやるよ...」
(さっきと口調が違うっ...!)
彼の囁きに胸の奥がきゅぅ...と締め付けられた
いままで感じたことのない感覚に不安になる
(私...この状況にドキドキしてるの...?)
「あの...ごめんなさ...」
謝らなければと震える唇から言葉を発すると
顎をすくわれ彼の瞳が覗き込んできた
何も言わずに見つめてくる彼はさっきまでの雨宮くんとは違う...
口元は形よく微笑んでいるけど、先ほどまでのやさしい微笑みではなかった
妖艶でいて...何を考えているのか分からないような笑み
そんな表情に目を奪われていると、顔がゆっくりと近づいてきて...
ガララッ...
「あゆ、お待たせ!」
「!?」