第5章 苦痛な日々(R18)
「廊下は走っちゃダメなんだよ?」
鼻を押さえてゆっくり顔を上げると、武本君が微笑んでいた
「...ご、ごめん」
「今みたいにぶつかったら危ないから」
そう言うと私の肩からずり落ちた鞄の紐を直してくれた
武本君って、雨宮君とは違う雰囲気がある人だな
明るいし、いつもニコニコしてるけど...どこか壁を感じるというか...
「それで?そんなに急いでどこ行くの?」
「え?えっと...」
今日あの場面を見られた事もあって、雨宮君に呼ばれている事を言うか躊躇った
武本君の質問に困っているといきなり鞄を奪われる
「武本くん!?」
「あゆちゃんにお願いしたい事があるんだけど、ちょっと来てくれる?」
私の鞄を持ったまま武本君は走ってきた方へと歩き出した
「ちょっと!待って!!」
「ん?」
「あ、雨宮君に...呼ばれてるの。だから鞄返して」
(早く行かなくちゃ!何されるか分からないよ...)