第16章 動き出した運命
恵の言葉にあゆの瞳が一層大きく開かれた
陽が落ち、暗くなった中で屋台の灯りが映ったあゆの瞳がキラキラと輝く
「梨奈がいなくなったあの日から、ずっと立ち止まったままだったんだ。前に進んじゃいけないって思ってた。俺が...俺だけが幸せになるなんて有り得ないと思ってた」
梨奈がいないのに、いつもと変わらない日々がまたやってくる
失った悲しみも...月日の流れと共に薄れていく
梨奈が死んでから1週間もすれば、誰もが何事もなかったかのように過ごしている
それが堪らなく嫌だった
なにもかも薄れてしまうなら、苦しみと共に留まっていたいとずっと思ってきた
でも...
そのせいで周りを傷つけていたなんて、気づけなかった
「全部...俺のワガママだったんだよな」
真っ直ぐ見つめてくるあゆの瞳を見つめ返し、恵は柔らかく微笑んだ
「フランスに行く以外、道は無いんだって思った時...あの場所へ...、あの日梨奈と待ち合わせしてた公園に行ったんだ。でも、公園は無くなってマンションが建ってた。全部変わったんだと思った...俺たちみたいに」
今でも、4人で遊んでたあの公園での思い出がすぐ浮かぶ
いつから変わってしまったんだろう...
そんな事を考えれば考えるほど、俺さえいなければ...と思ってしまう