• テキストサイズ

恋愛玩具

第16章 動き出した運命



「ずっと考えてたんだ。もし、梨奈がいたら何て言うんだろうって。でも...俺には分からなかった...。考えても考えても、俺の中の梨奈はただ悲しく笑うだけで、すぐ消えてしまうから...」

黙って自分の話を聞いてくれるあゆへ、再び視線を向ける

ずっと隠してきた自分の過去
今まで誰にも言ったことが無かった自分の思い

あゆになら...
あゆだから、自然と口から溢れてきた

「でも、あの時...未来は変えられるってあゆに言われて、心が軽くなった気がしたんだ。過去は変えられない、梨奈はもう戻ってこないって...とっくに分かってたのに。後悔ばかりで殻に籠ってたのは、俺が俺自身にちゃんと向き合わなかったからだ...」

「雨宮君...」

「見失いかけてた大切なことを気づかせてくれて、ありがとう」

恵の心は穏やかだった

梨奈と似てるとか...そんなの関係なくて
真っ直ぐで、不器用で、弱いくせに強がって
そんなあゆのことが...

好きだと気付いたから

「俺も...あゆに出逢えてよかった」

その言葉に、あゆは涙を溜めた瞳を大きく開いた

そっとあゆの柔らかな頬を撫で、顎をすくい上げる

熱っぽい視線を向けるとあゆはそっと目を閉じ、その瞬間...頬に雫が零れ落ちた

人混みから離れた暗い場所
高鳴る鼓動を感じながら少しずつ顔を近づける

聞こえるのは賑やかな人の声と、蝉の音

唇が重なる寸前
恵の脳裏にある言葉が浮かんだ

“俺...。恵は、椎田の事が好きなんだって思ってた”

“...俺も、そうだから”


あの時の勇介の表情を思い出す

恵はハッと目を開けると
そっとあゆの顎から手を離した

/ 311ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp