第16章 動き出した運命
「腕の傷は、もう大丈夫...?」
遠慮がちに問い掛けられた声に、恵は隣へと視線を向けた
隣に並んで座っているあゆが心配そうに顔を覗き込んでくる
「ああ、だいぶ良くなった」
「よかった...」
左腕を動かして見せると安心するように息をついたあゆ
そんなあゆを見て、恵はあゆと出逢った時からの事を思い出していた
あんな最低な出逢い方をして
たくさん傷つけたのに...
それでも自分の隣で微笑んでくれる彼女を、愛おしいと思う
「あゆ」
「ん?」
自分の呼び掛けに真っ直ぐ見つめてくる大きな瞳
目が合うだけで、胸が熱くなる
ずっと...
あゆに言えてなかった言葉があった
速くなる鼓動
雰囲気も相まって、らしくもなく震える指先を握った
「ありがとう」