第16章 動き出した運命
「ああ...」
なんだか、つい先日のことなのに...随分前のことのような気がする
駿やあゆに迷惑かけた上に、勇介にまで心配をかけてしまった
悩んでも答えが出なかった自分にとって、あの日の勇介の言葉は色んな意味で胸に突き刺さるものがあった
「もう会えないかもしれないって思ってたから...。本当、よかったよ」
「あの時はごめん...。ありがとな」
「俺はなにも出来なかったから、その言葉は駿たちに言ってあげて」
勇介の穏やかな声に、恵も穏やかな微笑みを返した
「雨宮君、山口君!」
遠くから聞こえた声に同時に振り返る恵と勇介
藍染の浴衣を着てこちらへと向かってくるあゆの姿に、2人は思わず言葉を失う
自分を見るなり黙ってしまった2人にあゆは表情を曇らせ俯いた
「やっぱり、変...かな?」
あゆの言葉に我に返った恵は、眉を寄せると僅かに頬を染めた
「別に...」
「可愛いよ」
照れ隠しからぶっきらぼうに答えた恵
自分の返答と被るように聞こえてきた声に、恵は驚くように勇介を見た
「すごく、似合ってる」
「あ...ありがとう」
予想もしていなかった勇介の言葉にみるみる真っ赤になっていくあゆ
あゆへと向けられる勇介の優しい目を見て、恵の胸は切なく締め付けられた