第16章 動き出した運命
そして、翌日
時刻は17時半
駿に言われた時間に来たが...
まだ誰も来ていなかった
祭りで賑わっている神社の鳥居の下
大勢の人が行き交っているその場所で恵は眉間に深くシワを寄せ立っていた
すれ違いざまに見てくる視線や、遠くから聞こえてくる黄色い声に恵の苛立ちは募っていく
「恵?」
ふいに隣から名前を呼ばれ顔を向けると、伺うようにこちらを見ていた勇介が「よっ」と手を上げた
「まさか、恵が一番乗りだとはな」
意外だと言うような表情を浮かべつつ近付いてくる勇介
「...俺も。自分が一番だと思わなかった」
そう返すと、勇介が堪らず吹き出した
「恵、すげぇ怖い顔して立ってるからさ。声掛けないで誰かが来るまで見てようかなって思うくらいだった」
「ひでぇ...」
「はは、冗談だよ」
楽しそうに笑う勇介に、人混みに苛ついていた気持ちが落ち着いていく
こんな穏やかな時間は久しぶりだ
「フランス行くの、やめたんだな」