第16章 動き出した運命
「みんなを見てれば分かる。武本君も璃央ちゃんも、雨宮君のことを心から大切に想ってる。きっと、出逢えてよかったって...みんなも思ってるよ。武本君も璃央ちゃんも、梨奈さんも」
髪を撫でていた手を滑らせ背中をぎゅっと抱きしめた
「雨宮君が苦しんでる姿なんて、きっと梨奈さんは望んでない。もし...梨奈さんが今の雨宮君を見たらこう言うんじゃないかな...?“前を向いて歩いて”って...」
「....っ」
「辛い過去は変えられないけど、未来は自分の力でいくらでも変えられるから。だから...自分ばっかり責めないで。雨宮君は1人じゃないからっ...」
気づけば、雨宮君を抱きしめながら私も一緒に泣いていた
私は月並みな言葉しか言えない
彼の心のしこりを取ることなんて、私には無理かもしれない
私の言葉なんてなんの力もない
けど...
雨宮君が今まで頑なに隠していた心を見せてくれたことが、素直に嬉しかった