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恋愛玩具

第16章 動き出した運命



「駿様。椎田様」

戻ってきた葵さんの呼びかけに私たちは立ち上がり顔を向ける
そこに、璃央ちゃんの姿はなかった

「恵様が目を覚まされました」

穏やかな葵さんの表情に私たちはそれぞれ安堵の息をついた

「そっか、よかった...」

隣から武本君の安心した声が耳に届く
張り詰めていた緊張感がとけ、体から力が抜けていった

「椎田様、数々のご無礼...申し訳ございませんでした」

突然目の前で深く腰を折る葵さん

私は慌てて背中に手を当てると、顔を上げるように促した

「顔を上げてくださいっ...、私は何もされてないですから」

顔を上げた葵さんの優しい瞳が真っ直ぐ自分へと注がれる

「最初は...梨奈様とは似ても似つかない...。貴女のことを好ましく思っていませんでした」

穏やかな口調で発せられる言葉が、チクリと胸に刺さる

梨奈さんを知っている人は誰もが思うこと

――似ていても、梨奈とは違う

私は会ったこともないし、話を聞いただけだけど...梨奈さんは本当に素敵な人だと思う

似ている私を見て、梨奈さんと姿を重ねるのは仕方がない

でも...
梨奈さんと違うと言われる度に、私自身を否定されているようで胸が苦しいほど痛くなる

葵さんからの真っ直ぐな言葉も、容赦なく胸に深く突き刺さってきた

「すみませ...」

「ですが、貴女がいたから...私も、覚悟を決めることが出来たのです」

「え...?」

厳しい言葉が続くと身構えていた気持ちをあっさりと裏切られ、私は目を瞬かせた

「あゆ様がいれば、恵様は...もう大丈夫ですね」

決して感情を表に出さなかった葵さんが、にっこりと優しい笑顔を見せた

「恵様をお願いします」

「...はい!」

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