第16章 動き出した運命
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病院に着いてすぐに雨宮君は手術室へと運ばれた
思った以上に傷が深かったようで失血が酷かったらしい
騒然となった空港での出来事は璃央ちゃんのお父さんが治めてくれ、大事には至らなかった
雨宮君が病室で眠っている間
私は葵さんから先ほど空港で聞いた話を更に詳しく聞いた
話を聞き終わった後、璃央ちゃんと葵さんは雨宮君の病室へと向かった
「はあ...」
無意識に溜息が口から洩れる
葵さんから全ての真実を聞いた今、胸がいっぱいで苦しい
信じがたい話の内容に思わず目頭が熱くなってしまう
(雨宮君は...大丈夫かな...)
更に心に傷を負ってしまったんじゃないか...
彼の気持ちを考えると切なくて堪らなくなる
視界がじんわりと滲み目を閉じていると、近付いてくる足音に顔を上げた
「...あゆちゃん、大丈夫?」
泣きそうな私の顔を見るなり心配そうに眉を下げる武本君
武本君の優しい言葉に、頬へと零れ落ちた涙を拭うと小さく頷き微笑んだ
「うん。...大丈夫」
私がこんなに辛いんだから
武本君はもっと辛いんだよね...
それなのに、こんな時でも私を気遣ってくれる
彼の優しさに心があたたかくなると同時に締め付けられるような痛みを感じた
私の隣に腰掛けた武本君は座った瞬間に大きく息を吐いた
「ダメだった...」