第15章 崩れゆく嘘[下]
「これが何か分かるね?璃央」
「......」
「璃央様は...梨奈様を親友として本当に大切に想っていました。しかし...、恵様に対する愛情の方が勝ってしまった...」
「葵は璃央が幼い頃からずっと一緒だったからね。信頼しているからこそ、葵には全て話していたのだろう?葵もずっと璃央の傍にいたんだ。お前の気持ちにはとっくに気づいていた。だから、これをずっと忍ばせていだんだよ...」
レコーダーを見せた父親の言葉に、璃央は唇を強く噛むと葵を鋭く睨んだ
「葵...、ずっと裏切っていたのね...」
「璃央様...」
「葵もずっと苦しかったんだよ。璃央の事を一番大切に想っているからこそ...真実を私に話してくれたんだ」
どんな時も表情を崩さない葵さんが、酷く悲しげに顔を歪めて璃央ちゃんを見つめていた
雨宮君も武本君も私も...その様子を黙って見ている事しか出来なかった
「恵君はこの時の事故で、かけがえのない人を失った。梨奈ちゃんは...大切な親友に命を奪われた。2人だけじゃない、駿君も葵も...大勢の人が傷ついたんだ。こんなに悲しすぎる事は無い」
俯く璃央ちゃんの視線に合わせるように、お父さんは体を屈めると璃央ちゃんの肩を掴んだ
「璃央...よく聞きなさい。人を信じるという事は、どんなに難しい事か分かるか?人との信頼は時間をかけないと築けない」
俯いていた瞳がゆっくりと上げられる
「お前に裏切られて亡くなった梨奈ちゃんの気持ち。お前を信じていた恵君や駿君の気持ち。お前も...信じていた人に裏切られる気持ちが分かったかい?」
その言葉に璃央は恵たちへ視線を向ける
自分へと向けられる恵や駿の瞳から、憎しみなんて感じなかった
ただ...酷く切ない視線に、璃央は目を見開き唇を震わせた
「......っ」
見開いた璃央の目から涙が零れ落ちていく
「...ごめ、なさいっ...」
肩を震わせ膝から崩れ落ちた璃央を抱きしめると、父親は頭をゆっくり撫でた